膀胱炎について

膀胱炎とはどんな病気?

排尿時に不快な感じがあったり、排尿の後がしみるような痛みを感じたりする。また、尿の回数が多くなるなど…。このような症状があったら、多くの人が、まず「膀胱炎」を疑います。男性より女性の方が、「膀胱炎」にかかりやすいようです。では、「膀胱炎」とはどんな病気でしょうか?

「膀胱」は、内面がやわらかい粘膜の袋で、尿を溜めるところです。その膀胱が炎症を起こすのが「膀胱炎」で、外部から大腸菌などの腸内細菌が、尿道をさかのぼって膀胱の中に雑菌が入り増殖することにより引き起こされる病気です。膀胱炎を引き起こす腸内細菌は、大腸・直腸に棲んでいる菌ですので、肛門やその周囲には必ずいるものです。

女性の場合は、肛門からまず膣に細菌が棲みつき、そこから、尿道、膀胱、腎孟へと侵入していきます。また、女性に膀胱炎が多いのは、男性に比べて尿道が短く、3、4pしかないため、細菌が膀胱内に侵入しやすいからです。膀胱炎は、女性にとって大変ポピュラーな病気です。

膀胱炎の種類

〈単純性膀胱炎〉

単純性膀胱炎は、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎です。 単純性膀胱炎は、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがあります。 また妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こります。 単純性膀胱炎の症状には、頻尿や残尿感などです。

〈複雑性膀胱炎〉

複雑性膀胱炎は、尿路に尿停滞、異物、持続的細菌源、あるいは全身的抵抗力の低下などの基礎疾患を有する慢性膀胱炎です。 複雑性膀胱炎は、これら基礎疾患を除去しなければ感染症は治癒しないことが多いといわれています。 また、複雑性膀胱炎には、しばしば複数菌感染がみられます。

〈間質性膀胱炎〉

間質性膀胱炎は、何らかの原因で膀胱の粘膜の内側の層に炎症が起き、筋肉が萎縮する病気です。通常、膀胱には200〜400mlの尿が溜まると尿意を覚えますが、この間質性膀胱炎になると膀胱が膨らまないため、100ml以下で一杯になります。 そして、尿が溜まると下腹部が激しく痛み、トイレに行く回数がとても多くなります。間質性膀胱炎の診断は、膀胱鏡で膀胱の内部を観察することが必要になります。

〈嚢胞性膀胱炎〉

嚢胞性膀胱炎は、膀胱粘膜に袋状の病変が発生します。

〈真菌性膀胱炎〉

真菌性膀胱炎は、真菌(かび)の感染によって膀胱が炎症を起こすものです。

膀胱炎の症状

〈頻尿〉

尿意を催しトイレに行く回数が増加します。 症状の強い時は、10分前後の間隔でトイレに行くことも少なくありません。 1回で出る尿の量は少なくなります。 排尿後もまだ残ってる感じ(残尿感)もあることが多いです。

〈排尿痛〉

炎症を起こした膀胱が、排尿により急激に縮まり刺激されるために排尿痛があります。 排尿の途中よりも、排尿の後半または終了後に痛む事が多いようです。 下腹部や尿道口の痛みとなります。

〈尿混濁〉

膀胱炎になると、細菌が尿の中で増殖し、白血球や炎症を起こした膀胱の粘膜がはがれたりして尿が白濁します。 尿に膿のようなドロッとしたものが混在します。臭いもきつくなることが多いようです。

〈血尿〉

細菌に膀胱粘膜が傷つけられて、目で見て分かるほどの血尿が出ることもあります。 血尿は、出始めから出終りまで同じ濃さではなく、膀胱がからっぽになる最後に強くなる、排尿終末時血尿のことがほとんどです。

 「膀胱炎の症状」には、このような排尿痛・残尿感・下腹部痛・頻尿・尿混濁・血尿などがあります。

これらの症状があっても病院に行かないで我慢していると、排尿しないときにも下腹部が痛むようになってしまいます。膀胱炎では通常、熱は出ませんが、熱が出たり、腰痛があったりする場合は、細菌が腎臓の腎孟まで炎症が広がり、腎孟腎炎になっている恐れがあります。

<膀胱炎の治療はどのようなものがあるのでしょうか?>

急性膀胱炎(細菌性)では、水分を十分に摂取して尿量を増すことにより、症状が緩和されます。でも、膀胱炎には過度のアルコール(ビールやワイン)の摂取はひかえましょう!

最もおすすめの膀胱炎の治療は、抗生物質の力を借りることです。

膀胱炎の原因となっている菌を死滅させる抗生物質を服用すれば、三日以内で症状はとれてきます。膀胱炎は膀胱内壁の細菌繁殖とそれによる炎症なので、まずは大腸菌など膀胱内部で繁殖している細菌を死滅させる事が肝要です。抗生物質は膀胱炎治療には効果が大変高く、通常は飲み始めてから遅くとも一週間以内には嘘のように膀胱炎が治まります。

<膀胱炎の原因には何がありますか?>

急性膀胱炎の原因としては、大腸菌やぶどう球菌などの細菌が膀胱粘膜に感染して起こるものが最も多いです。

女性は男性に比べると尿道がたった3〜5cmと短く(男性の尿道は14〜18cm)、細菌のいる膣や肛門と尿道との距離が近いことなどから膀胱炎を起こしやすいといわれています。膀胱は本来、細菌に対する抵抗力・免疫力を持っていますが、病気や無理なダイエット、過労で体力が落ち、抵抗力が弱くなった場合に感染しやすくなります。また、ストレスがたまっているときや、不潔なセックスをすると膀胱炎にかかりやすくなります。さらに、月経の前後にきわめて雑菌が感染しやすく、膀胱炎が起こりやすくなります。

その他、摂取した薬剤や食物による刺激などの物理化学的刺激が原因となるものや、膀胱の粘膜にアレルギー反応が起こることが原因となる膀胱炎があります。

<膀胱炎の予防としてできること>

■膀胱内に菌を入れない

■膀胱内で菌を増やさない

■身体の抵抗力を落とさない

具体的には?

〈トイレを我慢しない〉

水分を多めにとって、なるべくトイレに行き、尿と一緒に菌を外に出すようにしましよう。

〈身体の抵抗力・免疫カを落とさない〉

ストレスや過労、過激なダイエットは避けましょう。

★下半身を冷やさないことも膀胱炎予防になります。

★食事も栄養バランスの摂れたものにし免疫力を高めましょう。

〈陰部を清潔に〉

生理用ナプキンやおりものシートは、3時間以内に変えて清潔な状態を保ちましょう。

排便後には多少なりとも肛門とその周囲には大腸菌が付着しています。紙で拭く際には、後ろから前(肛門→尿道)へ拭くと尿道に菌が入りやすくなってしまいます。日頃から「前から後ろへ」拭くように心掛けて菌が尿道に入らないようにしましょう。

また便秘気味の人も膀胱炎になりやすいと言われますので、長期便秘にならないように気をつけましょう。

〈性行為後はトイレヘ〉

性行為中は細菌が尿道に侵入しやすい状況で、万一入っても排尿すると菌も一緒に流れます。同時に、陰部を軽くシャワーなどで洗い流していただくと更に膀胱炎の予防に効果的です。

 

「膀胱炎かな?」と思ったら、早めに病院に行くことが大切です。どうしてもすぐに受診できないという人は、温かい飲み物をたくさん飲んで、1時間おきぐらいにトイレに行き、膀胱を洗うようにしましょう。

また、腰を冷やさないようにし、しっかり休養して体力を落とさない事も大切です。女性の場合、ホルモンの低下や冷えによって、膀胱炎を繰り返してしまうことが多いので、漢方薬の治療を希望する人もいます。

膀胱炎に関連する食べ物
避けた方がよい食べ物

刺激物…からし・わさび・唐辛子などの辛いもの

発酵食品…ビール・ワイン・味噌・チーズ類・醤油

カフェイン食品…コーヒー・紅茶・お茶

酸性食品…炭酸飲料・酸味の強い果物

・予防・改善に良い食べ物

スイカ…むくみや腎機能が低下時の利尿効果

しょうが…体を温め・抗菌作用


膀胱炎を漢方で考えると?

漢方では、膀胱炎の原因として主に『膀胱の湿熱』と『体の消耗による免疫不足』などで考えます。また、間接的な原因としては、感情の変化やストレスなどによる神経の高ぶりが膀胱炎を誘発することもあります。間質性膀胱炎の場合は、こちらの原因が疑われることも多いです。

@  膀胱に湿や熱が停滞した『膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)』の膀胱炎

膀胱炎でまず疑うことが、湿と熱による炎症があるかです。
『湿熱』は、体にとって悪いもの(老廃物)で、一度たまると停滞して除去しにくいものです。

膀胱に湿熱が停滞すると、頻尿、排尿時の灼熱感(ヒリヒリした感じ)、排尿痛、血尿、尿の色が濃い(黄色〜ひどいときは茶色)、尿の濁りなどの炎症症状が現れやすくなります。急性の膀胱炎の症状によくみられます。

漢方薬では、瀉火利湿顆粒、五淋散、猪苓湯、五行草など、湿邪や熱邪を取り除くものや、余分な水を排泄させるもの、胃腸のはたらきを助けるものなどを用います。

A  からだが消耗し免疫が不足した『腎気虚損(じんききょそん)』の膀胱炎

過労や冷え、出産や慢性的な病気、加齢などで腎気(生命力)が消耗すると、膀胱の機能が低下しやすくなります。そして膀胱炎を繰り返しやすくなったり、慢性化させる原因となります。気=免疫力ともいわれ、気の不足は免疫不足を表します。

腎気には尿を漏れ出ないようにする固摂(こせつ)のはたらきもあり、腎気の不足により頻尿が起こりやすくなります。腎気が不足すると、頻尿の他に、冷えや腰痛、疲れやすい、むくみなどの症状が現れやすくなります。

漢方薬では、八味地黄丸牛車腎気丸など、「腎」を補って腎気を高めるものや、体をあたためるもの、健脾散やシベリア霊芝(チャガ)など胃腸を整え免疫を高めるものなどを用います。

B 体表のバリア機能が不足した『衛気虚(えききょ)』の膀胱炎

普段、体は「衛気(えき)」という気が、ウイルスや細菌などから守っていますが、この気が不足すると外邪の侵入を受けやすくなります。膀胱炎になりやすいなどの症状はこれにあてはまることが多いです。

衛気が不足すると、風邪をひきやすい、疲れやすい、皮膚が弱い、汗をかきやすい、アレルギー体質であるなどの症状が現れやすくなります。

漢方薬では衛益顆粒など衛気を高めるような漢方を用います。

 また、精神的要因が原因と考えられる間質性膀胱炎には、竜胆潟肝湯、清心蓮子飲など自律神経の興奮を抑えたり、リラックスさせる安神薬といわれる分類の漢方薬を用いることもあります。