多夢
概念
多夢とは睡眠中に夢をよく見ることで、多くはいやな怖い夢を見て、日中は頭がぼーっとして疲労感が残る。【素問:方盛衰弱】では「妄夢」、【霊枢・淫邪発夢】では「喜夢」と記載しており、後世には「多夢」と称している。このほか以下のようなものがある。「夢庵」は悪夢のことで、【雑病源流犀燭】に「心実するにより、すなわち驚憂奇怪のことを夢見て庵す」とある。「夢囈」は「ねごと」で、「夢遊」「夜遊」「夢行」は睡眠中に歩き回る「夢遊病」で、「夢驚」は驚くようなあるいは恐ろしい夢を見て突然目覚めることである。これらは多夢病因・病理が似ているので本項で述べる。ときに夢を見たり、夢を見て目覚めたのちに、何ら不快感を残さない場合は、正常であり、本項にはあてはまらない。
弁証分型
@心脾両虚の多夢
眠りが浅い・多夢・顔色が白い・動悸・驚きやすい・健忘・食欲不振・腹が張る・泥状〜水様便・息切れ・物を言うのが¥おっくう・倦怠無力感・舌質が淡・脈が濡細
治法
健脾養心
帰脾湯加減
A心腎不交(心腎陰虚・心火旺)の多夢
いらいら・焦燥感・眠りが浅い・多夢・体の熱感・動悸・腰や膝がだるく無力・潮熱・盗汗・舌質が紅・無苔・脈が細数。
治法
滋陰降火・交通心腎
黄連阿膠湯
B心胆気虚の多夢
恐ろしい夢をよく見る。よく目が覚める。ぼーっとする。情緒不安定・驚きやすく動悸がする・舌質が淡・脈が細弱。
治法
益気鎮驚・寧心定志
安神定志丸 酸棗仁湯加減
C痰火内擾の多夢
多夢・頭のふらつき・動悸・いらいら・怒りっぽい・痰が多い・胸苦しい・舌質が紅・舌苔が黄膩・脈が滑数。
治法
清熱化痰
黄連温胆湯加減 牛黄清心丸
多夢について
多夢は虚実に分かれるが、虚証が多い。気血の不足・陰液の不足などで発症しやすいので、臨床的には重視すべきである。  文献:【霊数・淫邪発夢篇】【雑病源流犀燭・不寐源流】