経血挟塊(月経血の凝血塊)
概念
経行挟塊とは、月経血中に凝血塊を混じえることをいう。歴代の医書で「経血挟塊」を専門に論じたものはなく、「月経不調」のなかで触れられることはあるがすべて「オ血」の症状に帰納されている。月経が遅延した場合の経行挟塊と「妊娠堕胎(初期流産)は誤診されやすいが、過去の月経の状況出血の状況・腰のだるさ・下腹痛の状態・妊娠反応などを参考にすれば鑑別できる。なお経血中に少量の凝血塊はあるが、特に苦痛のないものはセリ的範囲で、本項には含めない。
@気滞血オの経血挟塊
経血量が少なくて黒紫色〜腐肉状の凝血塊が混じり、凝血塊が排出すると腹痛が軽減し、経期不調・月経前または月経期に下腹が張って痛み圧痛がある・顔色がどす黒く甚だしければ青紫色を呈する・肌膚甲錯・抑うつ感・胸脇部や乳房が張る・食欲不振などがみられる。寒証をともなうときは、寒がる・四肢の冷え・下腹部が冷えて痛む・稀薄な経血・黒色の凝血塊・舌質が淡暗などを呈する。長期化して化熱すると、いらいら・怒りっぽい・くちやのどの乾き・粘稠な経血・鮮紅色の凝血塊などを呈する。
治法
行気解鬱・活血化オ
桃紅四物湯加香附子・ウコン・烏薬・木香
A寒凝血オの経血挟塊
暗紅色〜暗黒色でうすく少量の経血で、暗紫色の凝血塊が混じり、月経前または月経期に下腹部が冷えて絞約痛が生じ、温めると軽減し、月経周期の延長を呈することが多い。実寒では、顔面が蒼白・四肢の冷え・寒がる・うすい白色帯下・脈が沈金・などがみられる。虚寒では、淡色で少量の経血・温めたり押さえると腹痛が軽減する・脈が沈遅で無力などがみられる。
治法
温経散寒・活血調経
少腹逐オ湯 温経湯加減 当帰四逆湯 五積散
B気虚の経血挟塊
淡紅で希薄な経血が多量に流出したり、少量が長時間にわたり持続的に流出し、淡色で少量の小凝血塊を増じえ、ときに下腹部の下墜感があり、月経終了後も痛みあるいは張った感じが持続し、月経周期が短い・顔色が蒼白・息切れ・ものを言うのがおっくう・自汗・食欲減退・舌質が淡で嫩・脈が沈微または細弱などを呈する。
治法
益気活血・調血
聖癒湯加香附子 四物湯加黄耆・人参 (聖癒湯)
C血熱の経血挟塊
実熱では、紫紅色で粘稠な多量の経血・黒紫色の凝血塊・顔面紅潮・口唇の乾燥・いらいら・口渇・怒りっぽい・舌苔が薄黄・脈が数で有力などを呈する。虚熱では、紅色で希薄な少量の経血で凝血塊が混じる・両頬部の紅潮・手のひらの強い熱感・潮熱・盗汗・舌質が紅で嫩かつ乾燥あるいは紅で無苔・脈が細数で無力などを呈する。
治法
清熱・養血調経 (血分熱盛)
四物湯 加黄連・黄ゴン・香附子
養陰清熱 (陰虚内熱)
一陰煎加減 (生地黄・芍薬・麦門冬・丹参・熟地・牛膝・甘草)
経血挟塊(月経血の凝血塊)について
経血挟塊は「血オ」の範疇に属する。気滞・寒凝・血熱によるものが多く、気虚によるものは少ない。鑑別の要点は、まず凝血塊の色沢が鮮明か暗色であるかを判断し、次に経血の色・両・湿および症候から総合的に分析し、寒熱虚実を弁別することである。
文献:女科経論・月経門 (朱丹渓の引用