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中医診断と治療 |
のぼせ・ほてり |
のぼせ・ほてりは、からだのある部分に熱感を自覚することであり、他覚的にも紅潮や熱気を認める場合があります。のぼせは顔面部や頸部など身体上部への熱気の上昇であり、ほてりは頬・手のひら・足の裏といった固定部位に現れる熱感です。両者が同時に生じることも、いずれか一方しか出現しないこともありますが、原因は同じく火熱です。暑熱の季節や環境・発熱時にみられるものはここには含めません。 |
肝鬱血虚・化火 |
のぼせ・ほてり・いらいら・怒りっぽい・胸脇部が張って苦しい・食欲不振・肌につやがないなど多彩な症状 |
飲食や日常生活の不摂生・月経・出産・慢性病などで血が不足し、肝血の滋潤をうけられないために肝気が柔順でなくなって疏泄が失調しやすくなり、おりにふれて肝気が鬱結して化火したり、精神的ストレス・緊張・怒りなどによって肝気が鬱結化火し、肝火が陰血を次第に消耗するというように、肝鬱化火と血虚が因果関係をなす病態で、肝火が上亢してのぼせが発生します。更年期の女性によくみられ、日常のストレスがひきがねになってのぼせをひきおこします。 |
症状 |
のぼせ・頭面部のほてりや紅潮のほか、いらいら・怒りっぽい・胸脇部が張って苦しい・食欲不振・顔色や皮膚につやがない・爪がもろい・しびれ・筋肉のひきつり・月経異常など多彩な症状がみられます。 |
治療法 |
肝気の疏泄を十分に行わせるとともに、陰血を滋養することにより肝気を柔順にし、上部の化熱を冷やす「疏肝清熱・養血柔肝」を行います。 |
主な薬物 |
疏肝の柴胡・青皮・香附子・薄荷、養血柔肝の白芍・当帰・何首烏・熟地黄・、清熱の牡丹皮・山梔子など。 |
方剤例 |
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厥陰枢機不利 |
からだの上部はのぼせ、株は冷える |
陽熱を布達して全身を温める中枢的な働きを持つ厥陰(肝・心包)の機能が阻滞され、心包の陽熱が丈夫で鬱して下へ伝えられなくなるために、上部ではのぼせて下部では冷える「上熱下冷」の病態です。 |
@肝虚気滞 |
のぼせ・頭綿部のほてり・発汗・いらいら・下半身の冷えなど。 |
飲食や日常生活の不摂生・月経・出産・慢性病・精神的ストレスによる消耗で、肝の気血が不足して疏泄が十分に行われないために、厥陰枢機がうまく通らない病態です。 |
症状 |
のぼせ・頭面部のほてり・汗が出る・いらいらなどの上熱の症状と、下半身の冷え・月経不順などがみられます。 |
治療法 |
肝気の疏泄を強め上熱を冷ますとともに、肝虚を補って下冷を温める「疏肝泄熱・養肝温下」を行います。 |
主な薬物 |
疏肝理気の香附子・木香・檳榔子・センキュウ、補肝の当帰・白芍・人参、清熱の黄連・オウゴン・、温寒の環境・丁香・蜀椒など。 |
方剤例 |
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A血お |
内出血や血流停滞によって、上半身ののぼせ・ほてり・下半身の冷え、頭痛・肩こり・腰痛・肌や口唇がどす黒いなど。 |
外傷・手術・出産・精神的ストレス・慢性病などにより、内出血・血流停滞などの血おが生じ、血おの阻害によって厥陰枢機が滞る病態です。 |
症状 |
上半身ののぼせ・ほてりと下半身の冷えのほか、頭痛・肩こり・腰痛・顔色や口唇がどす黒い・皮膚につやがない・毛細血管拡張・月経痛・月経不順・舌質が暗〜紫いろあるいはお点やお斑などがみられます。 |
治療法 |
血行を促進し、凝血など不純物を除去する「活血化お」を行います。 |
主な薬物 |
桃仁・紅花・当帰・センキュウ・山稜・ガジュツ・大黄など。 |
方剤例 |
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陰虚内熱 |
人体の液体物質が消耗して、相対的に機能があまり、熱が生じて、栄養不良・脱水・異化作用の亢進をもたらし、ほてり・のぼせをもたらす。 |
慢性病・老化・過労・熱病・精神的ストレスなどで陰液が消耗し、陽気が相対的に有余になることによって内熱が生じる病態です。栄養不良・脱水・異化作用の亢進などを呈する消耗性疾患に相当し、ほてり・のぼせ・からだの熱感があって、午後から夜間に明らかになるのが特徴であり、舌質が紅・舌苔が少ない・脈が細く速いなどをともないます。 |
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@心陰虚 |
ほてり・のぼせ・熱感・不眠・夢をよく見る・動悸・焦燥・もの忘れ・口内炎など。 |
心陰が不足して内熱が生じると同時に、内熱が心神を乱して心神不安を呈する病態です。 |
症状 |
ほてり・のぼせ・熱感のほかに、不眠・夢をよくみる・動悸・焦燥・もの忘れ・口内炎などがみられます。 |
治療法 |
心陰を滋潤して内熱を冷ますとともに心神を安定させる「滋養心陰・安神」を行います。 |
主な薬物 |
養心陰の生地黄・熟地黄・当帰・麦門冬・白芍、安神の酸棗仁・柏子仁・五味子など。 |
方剤例 |
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A肺陰虚 |
ほてり・のぼせ・熱感・かわいた咳・痰に血が混じる・咽の乾燥・なせなど。 |
肺陰が不足して内熱が生じるとともに、内熱が肺気を上逆させる病態です。代表的な病変は肺結核の晩期です。 |
症状 |
ほてり・のぼせ・熱感のほかに、慢性の乾いた咳・痰に血が混じる・咽の乾燥・ねあせなどがみられます。 |
治療法 |
肺陰を滋潤して内熱を冷ますとともに痰をのぞき咳を止める「滋養肺陰・止咳化痰」を行います。 |
主な薬物 |
滋養肺陰の生地黄・熟地黄・玄参・百合・麦門冬、潤肺化痰・止咳貝母・百部・カロニン・天花粉など。 |
方剤例 |
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B肝腎陰虚 |
ほてり・のぼせ・熱感・いらいら・耳鳴り・めまい・頭のふらつき・ねあせ・遺精・腰や膝がだるく無力など。 |
肝腎の精血が不足して内熱が現れ、内熱の擾乱により、肝気の疏泄や腎の蔵精機能の失調をともなう病態です。 |
症状 |
ほてり・のぼせ・熱感のほかに、いらいら・耳鳴り・めまい・頭のフラツキ・寝汗・遺精・腰や膝がだるく無力などがみられます。 |
治療法 |
肝腎の精血を滋養して内熱を冷ます「滋養肝腎」を行います。 |
主な薬物 |
滋養精血の生地黄・熟地黄・女貞子・枸杞子・何首烏・亀板・鼈甲、清熱の知母・黄柏、清虚熱の牡丹皮・地骨皮・弦柴胡など。、 |
方剤例 |
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脾気陰両虚 |
手足のほてり・食欲不振・食べると腹が張る・口唇の乾燥・指のさかむけ・元気がないなど。 |
飲食の不摂生・飲酒癖・過労などで、脾気が不足するために陰液の産生が低下し、脾気と脾陰がともに不足した病態であり、陰液の不足にともなって内熱が現れます。 |
症状 |
手足のほてりとともに、食欲不振・食べると腹が張る・口唇の乾燥・指のさかむけ・爪傍の角化・元気がない・疲れやすい・舌質が紅で乾燥・舌苔が少ないあるいは剥落・脈が細いなどがみられます。 |
治療法 |
脾の運化を強めるとともに、脾陰を滋潤して脾気の働きを正常化させる「益気健脾・滋補脾陰」を行います。 |
主な薬物 |
益気健脾の人参・白朮・茯苓・炙甘草、滋補脾陰の山薬・蓮肉・ヨクイニン・ビャクヘンズ・白芍など。 |
方剤例 |
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虚陽外浮 |
慢性病・老化などで、極度の衰弱時に現れ、突然のほてり・のぼせ・熱感、寒がる・冷え・横になりたがるなど。 |
慢性病・老化などで腎陽が虚し、温める能力が低下するために陰寒が内生して盛んになり、残り少ない陽気をからだの外面におしやり、体表部に熱感が生じる病態です。内にある陽虚の陰寒が本体であり、外面に現れた浮陽による火熱は仮象であるところから、「真寒仮熱」と称され、極度の衰弱自に現れるので、治療を誤ると死亡に至る危険があります。 |
症状 |
突然にほてり・のぼせ・熱感が発生するが、ふだんは厚着をする・寒がる・冷え・横になっていたい・元気がない・腰や膝がだるく無力・舌質が淡で胖大・脈が無力などの陰寒の症状がみられます。
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治療法 |
腎陽を温補して陰寒を温め、浮陽を腎にひきもどして火熱をしずめる「温腎補陽・引火帰原」を行います。 |
主な薬物 |
補腎の塾地黄・枸杞子・山薬・山茱萸、補陽の鹿茸・鹿角膠・補骨脂・附子・肉桂、斂陽の五味子・竜骨・ぼれなど。 |
方剤例 |
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