流涙
概念
流涙とは、涙が流出することを指す。{素問・解精微論}に「風見則泣下」と記載され、{神農本草経}には「涙出」「泣下」とある。(証治準縄・七竅}では「迎風冷涙」「無時冷涙」「無時熱涙」の4つに分類している。情緒の変動にともなって泣いて涙を流すのは生理的反応である。眼周辺の炎症や涙管閉塞などにともなう流涙は、本項には含めない。
弁証分類
@肝経虚寒の流涙(迎風冷涙)
風にあたると冷たい涙が流出する・るい痩・顔色につやがない・口唇や爪が淡白・舌質が淡・脈が細。甚だしければ四肢の冷え・寒がる・味がない・舌質は淡・舌苔が白潤・脈が沈遅などを呈する。
治法
養血散寒
養血駆寒飲
A肝経風熱の流涙(迎風熱涙)
風にあたると熱い涙が流出する・両眼の充血・口や鼻の乾燥・頭のふらつき・耳鳴り・舌質が紅・舌苔が白薄・脈は弦あるいは細数を帯びる。
治法
軽症には清肝去風、重症には昇陽発散
羚羊角散(軽症) 白僵蚕散(軽症) 昇陽発散(重症) 昇陽降火湯(重症)
B肝腎両虚の流涙(無時冷涙)
冷たい涙が常に流出し冷えると増強し、食は涙が止まることもあるが、慢性化すると持続性になり、めまい・眼前暗黒・耳鳴り・聴力減退・不眠・遺精・腰や膝がだるく無力・舌苔が白・脈が細弱などを呈する。
治法
温陽肝腎・補益精血
菊睛丸 肝腎双補丸
C陰虚火旺の流涙(無時熱涙)
日中に熱い涙が流出し、夜間は乾燥して目の不快感があり、頭のふらつき・目前暗黒・舌苔が薄白あるいは薄黄・舌質が紅・脈が細数などを呈する。
治法
滋補肝腎・補益精血
椒ゴ丸 加味当帰飲子(肝胆実火)
流涙について
流涙は「冷涙」と「熱涙」に分けられる。冷涙は寒により、熱涙は火によって生じる。熱涙では、迎風熱涙は肝経鬱熱で風邪を感受したために、無時熱涙は肝腎陰虚の虚火上炎のために発生する。冷涙では、迎風冷涙は肝血不足に風寒が乗じたために、無時冷涙は肝腎両虚の陰損皮陽で涙の制約ができないために発生する。
文献
{諸病源候論・隕目候}
隕目は、これ風気は瞼眦の間に客し、気血津液と