口内炎・口中生瘡・口瘡・口舌生瘡
中医診断と治療
概念
口中生瘡とは、口腔内の粘膜や舌面に潰瘍・びらんなどが生じることを言い、「口内炎」に相当する。【内径】には{口ビ」「口瘡」{口瘍」と記載している。後世には症状と病理機序の違いにより、「口疳」「口舌生瘡」「口破」口内ビ腐」などと称している。一般には習慣的に、口内の潰瘍が限局し軽度のものを「口瘡」といい、口内が腐乱したようにびらんして範囲が広い重症を「口ビ」といい、小児の疳積(栄養不良)に関して発生するものを「口疳」と称している。小児の「口疳」すなわち「鵝口瘡」については別項でのべる。このほか、口角に発生するびらんを「口吩瘡」といい、俗に「燕口」「口肥瘡」と称するが、口中生瘡とは範疇が異なるものの病理機序が類似しているので、先人も同類とみなしていることが多く、本項と同様の弁証論治を行えばよい。
弁証分型
@脾胃積熱の口瘡
口内・唇・舌・歯齦などに潰瘍が生じ、周囲が発赤して腫れ疼痛があって、ものを食べるのに影響があり、甚だしければ舌・頬部が腫脹する。口渇して冷たい飲食を欲する・便秘・尿が濃い・体の熱感・舌質が紅あるいは烈紋がある。舌苔が黄・脈が数で有力などをともなう
治法
清熱瀉火
涼膈散 瀉黄散
A陰虚火旺の口瘡
反復して生じる口内炎で、潰瘍面が黄白色を呈し周囲が淡紅で、疼痛は夜間に増強し、疲労や睡眠不足で発生することが多い。口乾・いらいら・焦燥感・不眠・手のひらや足のうらのほてり・舌質が紅あるいは裂紋・舌苔が少ない・脈が沈細数などをともなう。
治法
滋陰清火・苦寒薬は用いてはならない
黄連阿膠湯 知柏地黄湯 六味丸 滋陰降火湯
B中気不足の口瘡
反復して生じる口内炎で潰瘍が淡色を呈し疼痛が軽度である。食欲不振・腹部膨満感・便が軟らかい・倦怠無力感・息切れ・ものを言うのがおっくう・舌質が淡で舌辺に歯痕がある・舌苔は白・脈は細弱などをともなう。
治法
補気健脾
補中益気湯 黄耆建中湯
口内炎(口瘡)について
口瘡には虚実の違いがあり、急性に発生するものは実火がおおく、慢性のものは虚火が多い。また、虚火には陰虚と気虚の違いがある。以上の三者には密接な関連性があり、実火が遷延すると気陰を消耗して陰虚・気虚が生じ、陰虚が続くと気を消耗して気虚をともなう。治療上は、実火には苦寒薬を用いるが、虚火には苦寒薬は禁忌で滋陰や補気の薬物を用いるべきで、症状に応じて根気よく調整する必要がある。このほか、虚実を問わずに、内服と同時に珠黄散・錫類散などを外用すると奏効する。
文献:【証治準縄・口瘡【雑病源流犀燭・口歯唇舌病源流】