肩こりのツボ

肩こり改善のツボはどこ?
肩の痛み・だるさに効果的なセルフケアも紹介

「肩こり」は健康上の悩みとして、女性ではトップ、男性では「腰痛」に次いで2位に挙げられます。仕事や家事の最中に“こり”を感じ、自分の手で肩をもんだり、首を回したりする人も多いでしょう。そのようなセルフケアは肩こりに有効です。

ここでは肩こりの対策として効果的なツボ刺激について、自分でツボ押しする際のポイントなどを紹介します。また、内臓や骨の病気からくる医学的な治療が必要な肩こりもあるので、それらを見極めるためのポイントも知っておきましょう。

肩こりの症状・原因

肩こりの症状は、首すじや肩から背中にかけての、はりやこり、痛みなどです。これらの主観的な不快感をまとめて「肩こり」と呼んでいます。ときには首や肩の症状だけでなく、頭痛や吐き気をともなうこともあります 。また、一部の肩こりは、ツボ押しでは対応できない場合もあります。

肩は負担がかかりやすい関節

冒頭でお話ししたように、日本人の多くが肩こりに悩まされています。なぜでしょうか?

その理由のひとつは、肩の関節の構造にあると考えられます。肩の関節はヒトの関節の中で最も自由度の高い関節(いろいろな方向に動かせる関節)です。その自由度の高い動きを可能にするために、肩の周辺には多くの筋肉があります。さらに、体重の10%を占めると言われるほど重たい頭を支えたり、腕の重量の支点でもあるため、常に負担がかかる部位でもあります。それらの複数の要因が、肩こりを起きやすくしているのです 。

そのほか、四十肩・五十肩といった整形外科的疾患、あるいは眼精疲労や歯科疾患、心臓疾患などの、肩から離れた部位や臓器の疾患の影響で肩のこりや痛みが現れることがあります。閉経前後の女性の場合は更年期症状として肩こりになることもあるようです。

また、ライフスタイルとの関連も少なくありません。ふだんの姿勢が良くなかったり、首や肩をあまり動かさないと肩に負担がかかります。パソコンやスマートフォンを長時間使用している際に、肩こりを感じたことがあるという方も多いでしょう。

肩こりは長引きやすい?

長引く肩こりに悩ませられている方も多いのではないでしょうか。

肩の周りには、重たい頭を支えるために僧帽筋(そうぼうきん)や肩甲挙筋(けんこうきょきん)といった筋肉があります。これらの筋肉は、長時間のスマートフォン使用などにより、緊張し続けると、筋肉が疲れて血液の流れが悪くなります。すると、そこに痛みを引き起こす疲労物質がたまり、さらに痛みやこりがひどくなるのです。このような肩こりの悪循環は、肩こりを長引かせるだけでなく、いったん痛みが生じると、痛みに対してより敏感になってしまうこともあります。

ツボ押しは肩こりに効果的なのか、まずはツボについて全般的な解説をします。

ツボの刺激は、数千年の歴史がある東洋医学に基づく療法のひとつです。現在では世界保健機関(WHO)が全身にあるツボの位置と名称を統一していて、その数は361カ所。それに含まれないものもあるので、全部で400を超えるとも言われます。

東洋医学では、体の中には心身機能を保つためのエネルギー=気が巡っていると考えます。そのエネルギーが巡る経路を「経絡(けいらく)」と言い、ツボとは、その経絡に沿って並んでいる体表面のポイントです。正式には「経穴(けいけつ)」と呼びます。

これらの経穴、つまりツボを刺激すると、経絡の流れが良くなって、さまざまな症状が改善すると考えられています。実際、皮膚に近い部分の神経と体内に広がっている神経はつながっているため、ツボを刺激することで体の中にまで作用が及ぶ可能性があり、その結果、血流が良くなって筋肉のはりやこりが和らぐと理解されています。なお、一部のツボは経絡から離れた場所にあります。

ツボ押しで対処できない肩こりもある

肩こりの中には、ツボ押しでは対処できないものもあるので注意しましょう。

先に述べたように、整形外科的な疾患以外の理由で肩こりが生じることがあります。たとえば、高血圧や狭心症、自律神経失調症、ストレス、メニエール病、眼精疲労、緑内障などです。顎関節症(あごの病気)に至っては、半数以上で肩こりが認められると報告されています。

これらのケースでは、ツボ押しで症状が良くなるか否かにかかわらず、医師のもとでの治療が必要です。

ツボの押し方、探し方

ツボの押し方

ツボは指(指の腹)で押すのが基本です。指以外には、爪楊枝を束ねてトントンと軽く刺激したり、ペットボトルの底の角で押したりするのも良いでしょう。ペットボトルの中にお湯を入れると、温かさも加わって気持ち良さがアップします。

強さについては、気持ち良いと感じる程度から、多少痛いと感じる程度の範囲が適切です。押すタイミングは入浴後の血行が良くなっている時間帯や就寝前などがおすすめですが、隙間時間を利用して、1日何回かに分けて行っても構いません。

ツボの探し方

ツボの位置を解説した書籍は多くあります。しかし、ツボの位置は個人差があるため、図示されたものは目安として考えると良いでしょう。専門家が施術するときも、筋肉のしこりや押したときの感触などから微調整して施術しています。ご自身で押すときには、押してみてしこりに触れるところ、気持ち良いと感じるところ、逆に痛みがひびくところを目安としてください。

自分で首まわりのツボを刺激する工夫

肩こりのツボは、首や肩まわりに多くあります。首筋のツボを押すには、両手の指をツボの位置に当てて、頭を軽く後ろに倒して頭の重さを利用して押すと良いでしょう。また、ゴルフボールなどをストッキングに入れておき、両手で引っ張るようにして、気持ち良いと感じる位置をピンポイントで刺激するのもおすすめの方法です。

肩こりにおすすめのツボ

肩井(けんせい)

肩井(けんせい)は肩こりのツボとして定番です。こりをほぐす効果が高く、肩がこったと思ったら、まずここを刺激してみてください。ツボの位置は、首の骨の根元と肩先を結んだ線の中間あたりです。

右肩は左手、左肩は右手の中指か人差し指で押します。押しながら腕を少し動かすと良いでしょう。

肩中兪(けんちゅうゆ)

肩中兪(けんちゅうゆ)は、肩井と並ぶ肩こりの代表的なツボです。腕のしびれや痛み、背中の痛み、こわばにりも効果的です。位置は、頭を前に倒したときに首の後ろに出っ張る骨の、少し斜め下あたり。反対の手の中指をフックのように引っかけるような要領で押してみましょう。

天柱(てんちゅう)、風池(ふうち)

天柱(てんちゅう)と風池(ふうち)は、どちらも首の後ろ側の比較的上部に位置するツボです。天柱は首の中心線と髪の毛の生え際から、親指の幅2本分ほど左右外側にずれたあたりで、風池は親指の幅4本分ほど左右外側にずれたあたりです。

天柱や風池を刺激すると、首と肩の血行が良くなります。そして、首のこり、眼精疲労にともなう肩こりなどに効果が表れます。

左右の手の親指の腹を左右の天柱または風池に当てて、両手の別の指で頭を包み込むようにしながら、親指を押し上げるように押すと良いでしょう。このとき、首を少し後ろに倒すと押しやすいかもしれません。

曲池(きょくち)、手三里(てさんり)

曲池(きょくち)や手三里(てさんり)は、五十肩などによる肩こりに効果があるとされるツボです。どちらも腕にあるため、あまりひと目を気にせずに刺激できるでしょう。

手の平を上向きにしてひじを内側に曲げ、曲げた内側にできるしわにそって親指側の端が曲池。手三里は曲池から親指の幅2本分ほど、手先にずらしたあたりです。

合谷(ごうこく)

合谷(ごうこく)は、手の甲にあるため、いつでも気軽に刺激できるツボです。親指と人差し指の骨の分かれ目あたりにあります。

合谷は経絡の末端にあたり、その流れが滞りがちになるポイントです。幅広い症状に有効で、とくに首から上の症状に効果的と言われます。

ツボ押しの効果を高めるポイントと注意点

ここまでで解説してきたツボは、すべて自分一人でも刺激することができます。そのため、いつでも気になったときにツボ押しが可能です。ただし、ツボ押しの効果をより高めるには、少し準備をしたほうが良いかもしれません。

具体的には、首や肩を蒸しタオルなどで温めて、筋肉の緊張をほぐしてから行うとより効果的です。ピンポイントでより強く刺激したい場合は、ボールペンやツボ押しグッズなどを使うと良いでしょう。また、温かい缶飲料や、お湯を入れたペットボトルの角を当てたりすると、押す力に加えて温熱効果によって、血流改善効果の上乗せが期待できます。反対に、痛みが強すぎると感じた場合は、爪楊枝を束ねて軽くたたくと良いでしょう。

注意点としては、爪を手入れしておくことと、お湯や温かい缶飲料を利用する場合はヤケドに気をつけることが挙げられます。

ツボ押し以外の肩こりを緩和するセルフケア

温めて血行を良くする

肩こりには血行不良が関係していることが少なくありません。そこで、温めることで血行が良くなり、筋肉のこりをとるように働いてくれます。ヤケドに注意しながらカイロを当てたり、ゆっくりお風呂に入ると良いでしょう。

また、ふだんから肩を冷やさないように服装には注意しましょう。夏場であれば、クーラーの温度設定を下げすぎず、風が直接当たらないような工夫をしてください。襟元が広くあいた服は避けたほうが無難です。冬場であれば、マフラーなどで首・肩の冷えを防ぎましょう。

市販薬を活用する

肩こりの市販薬には次のようなものがあります。使用の際には、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

肩こりの外用薬には、いわゆる“痛み止め”と呼ばれるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)という主成分に加えて、冷感や温感を与える補助成分が含まれています。冷感タイプか温感タイプかは、貼って気持ち良いと感じるほうを使えば良いのですが、肩こりの場合は温感タイプが好まれることが多いようです。

肩こりに加えて、疲労感や倦怠感もある場合は、内側から全身に働きかける内服薬もあります。エネルギー産生を促す働きのある、ビタミンB群を含む内服薬が適しています。また、ビタミンB群に加え、末梢の血液循環に関与するビタミンEなどが配合されているものも、肩こりに適していると考えられます 。

姿勢や動作をチェックする

椅子に長時間座っていたり、スマートフォンやパソコン操作を続けていたり、あるいは猫背の姿勢なども肩こりのリスクを高めます。同じ作業を長く続けざるを得ないときは、筋肉がかたまらないように適宜体を動かして、自分の姿勢をチェックすることを心がけてください 。

肩こり予防の体操やストレッチを行う

長時間同じ姿勢が続くときには、短時間でもリラックス体操を差し挟むと良いでしょう。また、筋肉のこりをもみほぐして関節の可動域を広げるストレッチや、筋肉を強化してこりを生じにくくするための肩こりに効く体操を、毎日続けてください。ペットボトルやダンベル(1sくらいのもの)のような少し重たいものを手に握って、振り子のように動かすのも良い方法です。

医師の診察を受ける

既に解説したように、ツボ押しの効果があったとしても、医学的な治療が必要な病気が隠れている肩こりもあります。

運動したとき(たとえば階段を上るとき)に肩が痛むのなら、狭心症の可能性があります。また、肩を動かしていないのに痛む場合は、骨や内臓の病気の疑いがあります。徐々に症状がひどくなるときも、原因を特定しなければいけません。これらに該当する場合は、早めに医師に診てもらいましょう 。