皮膚のしびれ感 知覚麻痺 肌膚麻木 |
概念
肌膚麻木とは「麻木」と略称し、皮膚の面状・索条状の限局性知覚麻痺を指す。「麻」は皮下に蟻走感があってさすっても止まらないこと、「木」は感覚の欠損をいう。古典医書ではさまざまな名称で記載され、{黄帝内経}では「不仁」{諸病源候論}では「不仁」「頑痺」「頑木」「針刺不痛」{寿世保元}では「麻痺」とある。後世では「頑麻」とも称している。本項では皮膚の限局面の面状・索条状の麻木について述べ、顔面麻木・口舌麻木・四肢麻木・半身麻木などについては別項にゆずる。 |
弁証分型 |
@風湿癘木の麻木 |
手足の皮膚に限局性の知覚脱失斑が生じ、紅斑あるいは白斑を呈し、疼痛・冷感・熱感はなく、皮膚の乾燥・無汗・毛髪の脱落・粃糠状の落屑をともない、慢性に経過して筋肉の萎縮やひきつりから「鷹爪状手」となり、眉毛の脱落・獅子鼻・舌質は紅・舌苔は白膩・あるいは黄膩・脈は弦数あるいは滑数などを呈する。 |
鑑別分析 |
虚弱者が癘気(風邪・湿邪・虫)を感受したり、病人の衣類・用具などを介して毒邪を感受し、癘気が血脈に侵入し皮膚を阻塞し気血の運行を阻害して発生する。癩に相当する。 |
治法 |
去風化湿・活血殺虫 |
方剤例 |
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交替に用いる。 |
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A痰湿の麻木 |
皮膚のしびれ感と近接の関節痛・手足が重だるく動かしにくい・局所を手でたたくとしばらく軽快する・舌苔は白膩・脈は濡数 |
鑑別分析 |
茶・酒・辛辣なもの・脂っこいもの・腥いもの・生もの・冷たいものなどを好んで食し脾胃を損傷して内湿が生じたり、湿気の多いところに居住したり、水仕事に従事して、内外より湿邪が皮膚に集まって営衛気血を阻滞したために発生する。 |
治法 |
化痰除湿・通経活絡 |
方剤例 |
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B気血両虚の麻木 |
皮膚にしびれ感が反復して突発し、運動により増強し、休息すれば軽快し、局所の皮膚が冷えて温暖を好み、時に蟻走感あるいは刺痛があり、更年期の婦人の上肢内側によく発生し、月経不順あるいは不正性器出血・舌質は淡白・脈は細で無力などをともなう。 |
鑑別分析 |
慢性疾患による消耗・七情け内傷・不正性器出血・遺精などによってひきおこされ{素問:逆調論}に「営気虚すればすなわち不仁し、衛気虚すればすなわち不用し営衛ともに虚すれば不仁し、かつ不用す」と述べているとおりである。 |
治法 |
補陽気血・温陽通絡 |
方剤例 |
黄耆桂枝五物湯 |
黄耆(オウギ)桂皮(ケイヒ)芍薬(シャクヤク)生姜(ショウキョウ)大棗(タイソウ) |
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Cオ血阻滞の麻木 |
皮膚のしびれが腰や股の外側などの圧迫を受ける部分に好発し、移動性はなく、夜に甚だしく、重症例では針で刺してもつねっても痛くなく、舌質は暗紅・あるいはオ点やオ斑がある・脈は渋滞を呈する。 |
鑑別分析 |
跌仆損傷・七情内鬱などにより気血が経脈にオ滞し、営衛が行らなくなってひきおこされる。 |
治法 |
活血化オ・通行経絡 |
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