|
冷え症 |
冷え症とはある一定の期間にわたってからだのどこかに冷えを自覚し、不快感や苦痛を感じることです。ふつうの人が寒いと思わない気候や環境で冷えを感じたり、寒い気候や環境の中で普通の人よりも強く冷えを自覚します。一般に冷える部分に触れると冷たく感じます。しかし、触れて冷たくても本人が冷えを自覚しなければ冷え症ではありません。 |
強い冷え |
一年を通じて冷えを感じ、少しでも涼しくなると強く冷えて、靴下や厚めの下着が手放せなかったり、寒さにむかう季節になると早々と暖房器具を使用し、温かい時期になってもなかなか離れられません。一般に寒がりで秋冬をつらく思い、クーラー・冷蔵庫・扇風機などが嫌いであり、冷たい飲食物を好みません。 |
陽虚
先天的虚弱・慢性病・老化などによりからだを温める力が衰えて冷えが生じた状態。 |
先天的虚弱・慢性病・老化などにより陽気が衰え温める力が衰えるために虚寒が生じ、冷える病態です。からだの機能が低下してエネルギー代謝が微弱になり、血行も悪くなって温める能力が低下した状態に相当し、衰弱の症状をともなっています。 |
|
@心腎陽虚 |
腰から下肢が冷え、頭・陰部・手の冷えをともなう、うとうとする・足腰のだるさ・夜間頻尿など。 |
人体の君火を主る心と相火主る腎の陽気が虚衰し、全身の温煦ができないと同時に、心の主る神明(精神意識)の衰えや腎の主る水液代謝の低下や腰の衰えなどがみられます。 |
症状:
一般に腰から下肢が冷えることが多く、頭や陰部、手の冷えなどをともなうこともあり、元気がなく疲れやすい・寒がる・日なたや温かい場所を好む・厚着をしたり縮こまる。すぐにうとうととして横になりたがる・腰や足がだるく無力・夜間頻尿舌質が淡白水様の舌苔・脈が細く弱いなどがみられます。 |
治療法 |
活力を増強し血行を促進してからだを温める(温補心腎)を行います。 |
主な薬物 |
鹿茸・鹿角膠・杜仲・兎絲子・補骨脂・ハゲキテン・インヨウカク・附子・肉桂など |
|
|
A脾胃陽虚 |
腹や手足が冷え、元気がない・食欲不振・消化が悪い・腹痛・下痢・つばやよだれが湧く。 |
脾胃の陽気が衰えて、温煦が不足するとともに運化も悪くなり、営血を生じる化源が不足し、四肢を養えない病態です。消化吸収機能が低下して、エネルギーの供給源が不足するために、生み出される熱量が少なく、血行も弱くなった状態に相当します。 |
症状:
一般に腹や手足が冷え、元気がなく疲れやすい・食欲不振・少ししか食べられない・食べても味がしない・消化が悪く腹にもたれる・腹がシクシク痛む・吐き気・げりがしやすく不消化物が混じる・つばやよだれが湧く・顔色がわるい・舌質が淡白・白い舌苔・脈が弱いなどがみられる。 |
治療法 |
証か吸収を強めからだを温める。(温補脾胃)を行います。 |
主な薬物 |
乾姜・附子・呉茱萸・人参・白朮・茯苓・炙甘草・黄耆など。また胡椒・山椒・生姜などの刺激物を使用した料理を食べるのも補助になります。 |
人参湯(理中湯) |
附子理中湯 |
桂枝人参湯 |
呉茱萸湯 |
|
|
寒湿
寒冷・湿気のもとに邪が侵入したり、からだの機能が低下して冷えとともに水分が停滞して、むくみをともなう。 |
寒冷・湿気などで寒湿の邪が外部から侵入したり、陽虚による虚寒と水湿の内生で、体内に寒湿が停滞する病態です。からだの冷えとともに水分(湿)停滞して、むくみをともなうのが特徴です。水分が皮下や筋肉内にあふれ、からだにとって余分な重量になると同時に、筋肉の動きを阻害するために、自覚的には重だるく動きにくくなります。また、水分が血管を外から圧迫するので血行が悪くなり、水分が外界の寒冷で冷やされると冷却効果より高まって持続するために、冷えが強くなります。水分は下方に貯留しやすいので、一般に下半身の冷えが顕著です。 |
|
@陽虚寒湿 |
|
先天的虚弱・慢性病・老化などにより、陽気が衰えて虚寒が生じると同時に、脾胃の水湿の運化や腎の膵液の蒸騰気化が衰弱して水湿が内生し、水湿と虚寒が結びついて寒湿となり、寒湿がさらに陽気を阻滞する病態であり、心腎陽虚・脾胃陽虚の悪化にともなって現れます。機能が衰弱して熱量が生み出せなくなり、血行も不足して冷えが生じると同時に、水分の運行と排泄の能力も低下して湿が停滞し、皮下や筋肉の組織間隙にあふれた状態に相当します。 |
症状:
強い冷え・寒がる・元気がなく疲れやすい・気力がない・からだが重だるい・下肢のむくみ・動きにくい・尿長が少ない・排尿困難・舌質が淡白で胖大・白い舌苔・脈が弱いなど。場合によっては全身浮腫・腹水・胸水などが発生し、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・呼吸困難・・動悸などを呈して、入院加療を考慮しなければならないこともあります。 |
治療法 |
身体を温め活力を増強し水分を尿として除く(温陽利水)を行います。 |
主な薬物 |
温陽の鹿茸・インヨウカク・ハゲキテン・乾姜・肉桂・附子、利水の白朮・茯苓・車前子・牛膝など。 |
|
|
A寒湿停着肌肉 |
下半身の冷え・下肢の軽度のむくみ・からだが重だるい・腰痛など |
寒冷と湿気にさらされたために、寒湿の邪が肌肉に侵入して停着し、陽気を阻滞するために温煦ができなくなり、冷えを生じる病態です。水分の排出や発散が妨げられて水分が体内に停滞したり、外界からの湿気が体内に侵入してとどまり、血行を阻滞する状態に相当します。魚屋・八百屋・調理師・漁師・水中作業者など湿気が多く冷たい環境で仕事を従事する人に、あるいは汗でぬれた着衣を着たままで作業したり、湿気の多い住居で起居することから、発症することが多くなります。一般に「湿邪は下から受ける」といわれ、水分は比較的に重いので下方に停留しやすく、下半身だけが冷えることが多くなります。古人は「水中に座っているようである」とか「腰以下が冷え、五千銭を帯びているように腰が重い」と表現しています。
|
症状:
下半身の冷え・下肢の軽度のむくみ・からだが重だるく動かしにくい・腰痛など。食用・排尿・元気などは通常です。なおこの状態が長期んに渡ったり、反復したり、元来あまり丈夫じゃない人がこの状態になると、次第に「陽虚寒湿」に変化していくので、早期の治療が望まれます。 |
治療法 |
からだを温めて水分をのぞく(散寒利湿)を行います。 |
主な薬物 |
散寒の附子・桂枝・乾姜・生姜・、利水滲湿の茯苓・蒼朮・猪苓・沢瀉・ヨクイニンなど。 |
|
|
寒凝
寒冷刺激で血管が収縮して血行が滞る状態。 |
寒冷の時期あるいは環境で、凍結の性質をもつ寒邪の侵襲を受けて血脈が凝滞するために発生する病態です。寒冷刺激により血管が収縮して、血行が滞る状態に相当します。 |
|
@血虚受寒(寒滞肝脈) |
四肢の抹消・下肢の内側・陰部・下腹部両側の冷え・爪がもろい・筋肉のひきつり・腹痛など |
血虚に乗じて寒邪が侵入して停滞し、血脈を凝滞させる病態です。「肝は血を蔵す」で、下肢の内側から陰部を通り両下腹部を上行している肝の経絡に沿って冷えがみられるのが特徴です。血虚とは栄養状態が悪く、循環血液量も少なく、元来血行に問題のある体質であり、寒冷刺激が加わると容易に血行が影響を受けます。 |
治療法 |
からだを温め血行を促進するとともに栄養状態を改善し月経を調整する(散寒通絡・補血調経)を行います。 |
主な薬物 |
散寒通絡の桂枝・乾姜・呉茱萸・センキュウ・烏薬・延胡索、補血調経の当帰・白芍など。 |
当帰四逆湯 |
当帰四逆加呉茱萸生姜湯 |
温経湯 |
五積散 |
|
|
|
軽い冷え |
主に四肢の抹消である手足が冷え、寒冷の時期や環境においてのみ冷えたり、期間が短かったり間欠的であり、不快なだけで特に苦痛ではない状態です。
|
湿滞
寒冷時に死し抹消が冷え、むくみ・尿量が少ないなどをともなう。 |
飲食の不摂生などで脾胃の運化がしょうがいされて水湿が停積し、寒冷とあいまって血脈を凝滞させ、冷えを引き起こす病態です。寒湿とよく似た状態ですが持続性はありません。ふだんから軽度の水分代謝障害のむくみ、皮下や筋肉に停滞した水分が血管を圧迫して血行不良を起こしやすい状態があり、寒冷の刺激で血管が収縮すると、通常の人よりも強く冷えを自覚します。血虚の体質ではより寒冷の影響を受けやすくなります。 |
症状:
寒冷時に四肢抹消の冷えを自覚し、むくみ・尿量が少ないなどをともなっています。血虚の体質では、さらに顔や皮膚につやがない・月経が遅れる・経血が少ないなどがみられます。 |
治療法 |
水分を尿として除去する(利水滲湿)を行います。 |
主な薬物 |
蒼朮・茯苓・猪苓・沢瀉・車前子など。 |
|
|
肝鬱気滞
四肢抹消の冷え、ゆううつ・緊張感・いらいら・ヒステリックな反応・胸や腹が張って苦しい・げっぷ・吐き気など。 |
緊張・きまじめ・小心・不安・心配・精神的ストレスなどによって肝気が鬱滞し、疏泄が不十分なために血行が悪くなり、四肢抹消が冷える病態です。精神情緒が不安定で緊張が強くなると冷えが明らかになるのが特徴です。自律神経系の緊張により機能が停滞し、血管運動神経の緊張で四肢抹消にまで血行が行きわたらない状態です。の、肝鬱気滞が反復したり長期にわたると、陽気が内部で鬱して火熱を生じ肝鬱化火に移行します。 |
症状:
四肢抹消の冷えとともに、ゆううつ・緊張感・いらいら・ヒステリックな反応・胸や腹が張ってくるしい・げっぷ・吐き気などをともないます。肝鬱化火の場合には、いらいらして怒りっぽい・のぼせて顔が赤くなる・からだのほてり・目の充血・頭痛などがみられます。 |
治療法 |
精神をのびやかにし自律神経系を調整し、肝の疏泄を正常にして気機を円滑にする(疏肝解鬱・理気行滞)を行います。 |
主な薬物 |
柴胡・香附子・青皮・ウコン・など。 |
|
肝鬱化火したときは興奮を沈め熱を冷ます清肝瀉火のサンシシ・牡丹皮・竜胆草などを加えます。 |
|
|
血オ
下半身の冷えや、顔色や口唇がどす黒い・肌の色が悪い・毛細血管拡張・月経痛・月経不順など。 |
外傷・手術・出産などによる離経の血(内出血)、慢性病・老化などの陽気不足にともなう推動無力、血の不足による血行渋滞、痰湿や気滞にともなう血行の阻滞などが原因で、血流が停滞するために冷えが生じる病態です。微小循環系や静脈系の鬱血が生じて血行が悪くなっている状態です。一般に下肢の冷えが多いのですが、下半身に鬱血があって上半身との血行のバランスがくずれているせいか、上半身に熱感やのぼせを訴える「冷えのぼせ」もよくみられます。 |
症状:
下半身の冷えあるいは冷えのぼせに、顔色や口唇がどす黒い・皮膚の色が割る・毛細血管拡張・月経痛・月経不順などをともないます。また、原因になるほかの病変による症状もみられます。 |
治療法 |
うっ血を除いて血行を促進する(活血化オ)を行います。 |
主な薬物 |
当帰・センキュウ・桃仁・紅花・山リョウ・ガジュツなど。 |
|
原因となる他の治療法と合わせるべきです。 |
|
最もよく見られる冷え症 |
老人 |
腰から下肢が冷える(頭の冷え・陰部の冷え・手足の冷えもともなうことがある)元気がなく疲れやすい・暖かい場所を好む・すぐにうとうとして横になりたがる・腰や足がだるく力が入らない・夜間よく尿に起きる・舌質が淡白で胖大・脈が遅い(心腎陽虚) |
|
腹や足の冷え・元気がなく疲れやすい・食欲節??ン・消化が悪く腹がもたれる・腹痛・嘔気・下痢をしやすい・つばやよだれが湧く・顔色が悪い・舌質が淡白・舌苔が白・脈が弱い(脾胃陽虚) |
人参湯(理中湯) |
附子理中湯 |
桂枝人参湯 |
呉茱萸湯 |
|
|
青・壮年 |
四肢の抹消・下肢内側・陰部・両側下腹部の冷え・顔色につやがない・皮膚のキメが粗い・爪がもろい・筋肉がひきつる・腹痛・外陰部の収縮・脈が沈んで細い・よく女性に発生し月経痛・月経の遅延がある(血虚受寒) |
当帰四逆湯 |
当帰四逆加呉茱萸生姜湯 |
温経湯 |
五積散 |
|
四肢抹消の冷え・ゆううつ・緊張感・いらいら・ヒステリックな反応・胸や腹が張って苦しい・げっぷ・吐き気(肝鬱気滞) |
|
|
|
|
|
|