便秘について

腸のはたらきと排便のしくみ

胃や小腸で消化された食物は、水分の多いどろどろの液状となって大腸に入り、ゆっくりと水分が吸収されて固形化(便塊化)し、肛門へと送られます。もし便塊が何日も大腸内にあると、水分吸収はさらに進み、便塊は硬く小さくなります。

腸の動きは、自律神経に支配されています。便を体外に送り出すためのぜん動運動(=腸のくびれが肛門方向に伝わっていくこと)は、胃に食物が入ると指令(=胃・結腸反射)が出て始まります。そして、便が直腸に達すると大脳に指令が送られ、便意をもよおします(=排便反射)。ストレスにさらされると、自律神経がうまくはたらかないため正常な腸のぜん動運動が起こらず、便が滞って便秘につながることがあります。

便秘の種類と原因

便秘の原因は、人によって異なります。分類すると、機能性便秘3種類と器質性便秘の計4種類に分けられます。症状に合った対処をするためにも、自分の便秘の種類を把握しておきましょう。

機能性便秘

[弛緩性便秘]=大腸の運動が低下

腸管の緊張がゆるんでしまい、ぜん動運動が十分行われないため、大腸内に便が長くとどまり、水分が過剰に吸収されて硬くなるタイプ。便秘の中でも頻度が高く、女性や高齢者に多い。
おなかが張る、残便感、食欲低下、肩こり、肌荒れ、イライラなどの症状も起こる。
運動不足、水分不足、食物繊維不足、腹筋力の低下、極端なダイエットなどが誘因に。

[けいれん性便秘]=大腸の過緊張

副交感神経の過度の興奮によって腸管が緊張しすぎてしまい、便がうまく運ばれずに、ウサギのフンのようなコロコロとした便になるタイプ。食後に下腹部痛、残便感などの症状があることも。また便秘と下痢を交互にくり返すことも多い。
精神的ストレス、環境の変化、過敏性腸症候群などが誘因に

[直腸性便秘]=直腸に便が停滞

便が直腸に達しても排便反射が起こらず、直腸に便が停滞してうまく排便できなくなるタイプ。
高齢者や寝たきりの人のほか、痔や恥ずかしさなどにより排便を我慢する習慣がある人に多い。

器質性便秘

イレウス、大腸がん、腸管癒着などの器質的な原因があって、消化管(小腸・大腸)に通過障害が起こるタイプ。血便、激しい腹痛、嘔吐などがあればすぐに病院へ行きましょう。このような便秘では腸管穿孔を起こすおそれがあるので下剤を使用してはいけません。

1-1.便秘の原因・仕組み

便秘になる原因は多岐にわたります。たとえば、「食習慣や生活リズムの乱れ」「栄養素の不足」「水分不足」「運動不足」「腸の筋力低下」「ストレスや緊張」「体質」「疾病によるもの」などが挙げられます。

そして、数ある原因の中でも「栄養素の不足」と「水分不足」は便秘に強く関係します。便は腸を進むにつれ、水分が吸収されて固形物に近づくため、水分が足りないと便が硬くなってしまうためです。

便の固形物は、主に不消化物や腸内細菌残骸などですが、便が硬くなると排出時の不快感や残便感にもつながります。また、食物繊維が不足することにより、便の体積が小さく、便意が起こりにくい場合や、便が硬くなることもあります。

これらの原因に加え、精神的な要因や体質によっても便秘は起こり得ることを覚えておきましょう。

1-2.便秘が女性に多いとされる理由

冒頭でもご紹介したように、「便秘は男性よりも女性のほうがなりやすい」と言われています。これは、男女の生活習慣の差や、女性ホルモンの働きが要因として考えられます。たとえば、女性の場合、ダイエットをしている方は多いですが、食事の制限によって大腸の「蠕動運動(ぜんどううんどう)」と呼ばれる、便を肛門へ運ぶ運動が少なくなってしまいます。

また、黄体ホルモン(プロゲステロン)と呼ばれる女性ホルモンは、体内に水分を蓄積する働きがあることから、便の水分が少なくなり、便が硬くなってしまうことが考えられます。特に妊娠の初期には、黄体ホルモンが腸管の動きを弱め、中期には子宮が大きくなることによって腸が圧迫される傾向があり、いずれも便秘になりやすい状態と言えます。

さらに外出先で排便することを我慢してしまう女性も多いでしょう。便意を我慢することが習慣になると、排便反射が鈍化してしまい、便秘につながることもあります。

2. 便秘の種類

便秘になる原因は、複数存在することが分かりました。しかし、原因によって便秘も複数の種類に分かれるため、正しく把握しておく必要があります。ここからは、便秘の種類を見ていきましょう。

2-1.機能性便秘(弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘)

便秘の中で最も多いのが、機能性便秘です。腸や肛門の機能が衰えたり、ストレスや生活習慣によって動きが乱れたりすることで起こります。

機能性便秘は、細かく分類すると「弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)」「痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)」「直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)」の3種類に分かれます。

2-1-1.弛緩性便秘

便を肛門へと動かす大腸の動きが弱まることで引き起こされる便秘です。大腸の運動機能が低下することによって、便が大腸の中に留まってしまいます。

2-1-2.痙攣性便秘

ストレスなどの精神的な原因により結腸の緊張が高まり、便秘と下痢を繰り返してしまいます。

2-1-3.直腸性便秘

直腸に便が降りてきていても、便意を感じなくなってしまいます。

2-2.器質性便秘

大腸癌や腸閉塞などの器質的疾患に伴って起こる便秘です。

2-3.症候性便秘

糖尿病、甲状腺機能低下症、慢性腎不全などの「内分泌・代謝疾患」、脳血管疾患、パーキンソン病などの「神経疾患」、不安神経症・うつ病などの「精神疾患」が原因として挙げられます。

2-4.薬剤性便秘

病気を改善する目的で摂取した薬の副作用によって、大腸の動きが鈍り、便秘になることもあります。

3.便秘によって引き起こされる痔について

便秘は、体質によって引き起こされると言われています。しかし、放っておくと痔を引き起こす原因にもなります。

痔は便が硬いときに力強くいきんだり、座位の時間が長く肛門に負担がかかったりすることで引き起こされます。

便秘がちの場合は便が硬くなっており、排便の際に硬い便が肛門をスムーズに通れず傷つけることで、「切れ痔」を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

4.便秘の予防法・解消法

便秘の原因は複数存在するため、予防法や解消法もその原因によってさまざまです。便秘でお悩みの際は、しっかりと原因を把握し、その原因に合った解消法を実践してみてください。

食物繊維をはじめとする栄養不足の場合は、食事内容を見直してみましょう。野菜や果物、海藻、きのこ類には食物繊維が多く含まれています。

排便のリズムが整わない人や便意を感じにくくなっている人は、生活習慣を整え、トイレに座る習慣も付けてみましょう。起床後、太陽を浴びしっかり朝食を摂ることで、体内時計の周期を調節できます。

また、適度な運動は大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促すために重要です。ストレス解消や精神状態の安定にもつながるため、ストレッチや軽いウォーキングで良いので運動も習慣にしましょう。

なかなか症状が改善しない人や、便秘に長く悩んでいる人は、医師に相談することをおすすめします。

便秘の原因と向き合いながら生活習慣を改善しよう

身近な症状で便秘に長く悩まされている人も、少なくありません。軽く見て放っておくと、体のさまざまな不調や病気を引き起こしてしまう可能性があります。

便秘とひとことで言っても、原因によって種類が異なります。それぞれの便秘の原因を探り、向き合い、少しずつでも改善できるように生活習慣や食習慣を見直しましょう。